適正な経営面積の見極め方③月別の作業時間をもとに、自分の限界面積を算出する
『自分の経営面積はどれくらいが限界なのか?』
を考える記事、3回目です。
前回の記事では、
『10aあたり、月ごとに作業時間が何時間ずつかかるのか?』
を算出してもらいました。
この記事では、
『簡単な割り算』を使って、
結論となる、
『自分の限界の面積』を算出しましょう!!!
目次(クリックすると、該当の段落に移動します)
前回完成した表を確認しよう
まず、前回求めた
『月ごとの作業時間一覧表』を見ながら、
以下の点を確認しましょう。
①1番忙しいのは何月か、1番時間に余裕があるのは何月かを見る。
俗に言う年間通しての『ピーク』は何月なのかを確認しましょう。
最たる例は、稲作農家です。
例)4月(田植え時期)と
9月、10月(稲刈り)が忙しく
12月〜2月は作業時間に余裕がある。
野菜農家であっても、作物ごとによって忙しい時期が異なると思います。
『定植』や『種まき』が忙しい作物。
『草取り』や、『剪定』などの管理が忙しい作物。
『収穫』や『調整』が忙しい作物。
また、年間通しての作業時間が平均的な作物もあるでしょう。
まずは、自分の労働時間(作業スケジュール)のピークと、
余裕がある時期の確認をしてください。
②自分の月間の限界作業時間を設定する。
別記事で紹介します(準備中)が、自分はMAXで、
月間何時間労働できるのかを算出して下さい。
いつも説明している通りですが、
『余裕を持った』時間設定にしましょう。
今回は、例として
昼休みなどを除外して、1日8時間
月間 20日働いた場合として、
8×20=160時間/月間
という場合で考えてみましょう。
実際に計算してみよう!
限界面積の算出方法、その公式
【『自分の限界作業時間』÷ 『月の作業時間』】
という公式が基本となります。
あなたの農業スタイルによって、
入力する数字が若干変わりますので、
それについては以下の解説をご覧ください。
計算方法①全て1人で作業する場合(雇用を一切しない場合)
1人で全て作業をする!妻や親父にも頼まない!雇用もしない!
という完全ソロの農家の方は、計算が至ってカンタンです。
先程算出した、
『限界作業時間』(今回は160時間)
を
自分の年間作業時間の
『ピーク』の月の労働時間で割り算します。
つまり、この場合の公式は
【『自分の限界作業』÷ 『ピークの月の作業時間』】
です。
例えば、
サツマイモの10aあたりの作業時間のピークが、
80時間だった場合、
160 ÷ 80 =2
つまり、例であげた農家の場合、
ソロ農業でサツマイモ栽培における限界面積は、
10aが2回分。
つまり、20aということになります!
ただ、この計算方式で行くと、
『忙しくない月』は、やる事がなくなってしまいます。
忙しくない月にピタッとハマる、
違う作物を計画して栽培するのもいいでしょう。
代表的なのは、稲作と、別の作物の二毛作なんかがそれですね。
また、他の作物を栽培するほどの余裕がない場合は、
地域の草刈りやトラクター作業の委託などを受けて雑収入を増やすのも
手かもしれませんね。
計算方法②『雇用』できる場合の限界面積
ソロ農業でやる場合は、ピークの時期に合わせて面積を計算したわけですが、
アルバイトさんを雇用できる人の場合は、
ピークではなく、1番ヒマな時期の作業時間で計算する事も可能です。
1か月の限界作業時間(160時間)
を
『12か月の中で、1番ヒマな時期の作業時間』で割ると、
『1番ヒマな時期』を、
自分1人でギリギリ回せるだけの面積が
算出されます。
当然『計算方法①』の場合より、広い面積が表示されているはずです。
すると、
1番ヒマな月以外の月の作業時間が、
限界作業時間(160時間)を
超えてしまうはずです。
したがって、160時間を超えてしまった作業時間を
アルバイトさんの労働力でカバーする、
というスタイルになります。
当然、160時間を超えてしまった分の時間には、
『アルバイト代金』(労賃)が発生します。
面積を増やせば、売上もUPしますが、
その分経費(肥料代、農薬代等に加え、労賃)も増えてきます。
売上の増加に対して、経費が掛かりすぎていないかを確認しましょう。
計算方法③家族経営の場合は、作業限界時間を増やす
ご夫婦で就農、または親元就農をしている。
『雇用は考えていないけど、妻や親父が手伝ってくれている。』
この場合は、どうやって限界の面積を求めたらいいでしょうか?
答えはカンタン。
作業限界時間が『増え』ます。
自分の月間の限界作業時間が160時間だとして、
それに家族の月間の限界作業時間を増やします。
親元就農の方で、
お父さんがフルで手伝ってくれるようなら、
自分と同じく、160時間を足して、
320時間、というふうになったり、
奥さんが手伝ってくれる場合は、
家事や育児などで、少し早目に帰らないといけないので、
月間100時間として、合計260時間、のように、
家族の時間を足します。
例
・自分が160時間、妻が100時間の労働時間)
・『計算方法①』と同じく、
サツマイモ10aのピーク時間80時間
の場合
260 ÷ 80 =3.25
10aを3.25回分、つまり、
32.5aが夫婦での限界面積となります。
注意点とまとめ
今回算出した方法は、あくまで『言語化した作業手順』をベースにして、
規模をどこまで増やせるか、というやり方です。
面積を広げることによって、10aあたりの作業効率が改善されることもありますし、
逆に今のやり方だと、収穫量が増えた場合に、袋詰めの効率が極端に落ちたり、
売り先が確保しきれずに、ロスや廃棄が出たりすることも考えられます。
とはいえ、まずはこういった『自分はどこまで規模拡大できるのか?』
という事を考えることにより、
『この作物は儲かっているのか、思ったほど儲からないのか』
『今の作業内容にムダはないか?』
など、今まで見えていなかった経営の改善点が見えてくると思います。
また、今回の方法を用いれば、
試験的に1〜2a程度で取り組んでいる新規の作物であっても、
どれくらいまで面積を増やせるか試算することができます。
メチャクチャ忙しいシーズンに考えることは難しいかもしれませんが、
時間に余裕がある人、
また、今から就農する人、
新しい作物に取り組む人は
ぜひ取り組んでみて下さい。